大人の塗り絵を始めてみたものの、思ったように仕上がらない。塗り絵本のお手本はあんなに透明感があるのに、自分のはどこかくすんで見える——。
腕の問題だと思われがちですが、多くは画材の性能で説明がつきます。大人の塗り絵は細かい図案を何層も塗り重ねるため、子ども向けの色鉛筆では途中で色がのらなくなります。
この記事では、大人の塗り絵に向く画材を、予算と目的別に整理します。いきなり高価なセットを買う必要はありません。
子ども向けとの決定的な違い
色鉛筆の芯は、顔料をロウなどで固めてできています。安価なものはロウの比率が高く、2〜3色重ねると表面に膜ができて、それ以上色がのりません。
画材メーカーの中〜上位グレードは顔料の比率が高く、何層でも重ねられます。大人の塗り絵で使う「少しずつ色を重ねて深みを出す」という塗り方は、この性能があってはじめて成立します。
1. まず1セット目|油性色鉛筆 36〜72色
迷ったらここからです。大人の塗り絵の図案は面積が小さく、色を混ぜる余裕がありません。必要な色が最初から入っているほうが快適です。
選ぶときの目安は3つ。
- 36色以上|肌色系・グレー系の中間色が入っている
- 油性(オイルベース)|重ね塗りに強い
- 芯がやわらかい|筆圧をかけずに濃く塗れる
2. 一段上へ|プロ仕様のソフト芯
塗り重ねに慣れてくると、芯のやわらかさが物足りなくなります。プロ向けの色鉛筆は芯がきわめてやわらかく、紙の凹凸を顔料で埋めきることができます。ここまでいくと、色鉛筆でも油絵のような深い発色になります。
ただし芯がやわらかいぶん折れやすく、消しゴムでも落ちにくくなります。下描きなしで塗れるようになってからが向いています。
3. 別ルート|アルコールマーカー
色鉛筆とはまったく違う仕上がりを求めるなら、アルコールマーカーという選択肢があります。ムラなく均一に塗れ、重ねるとにじみながら混ざります。
注意点は裏抜けです。普通のコピー用紙では裏側まで色が抜けるため、専用紙か厚口の紙が必要になります。塗り絵本に直接使う場合は、下に紙を1枚敷いてください。
4. あると変わる小物
ぼかし用のブレンダー
色鉛筆で塗ったあと、専用の溶剤やブレンダーでなじませると、線のあとが消えて絵の具のような面になります。グラデーションの仕上げに効きます。
芯を尖らせる道具
大人の塗り絵は線が細いので、芯の先端が命です。とがった状態を保てるかどうかで、細部の仕上がりが変わります。
予算別のおすすめ
| 予算 | そろえるもの | できること |
|---|---|---|
| 〜3,000円 | 油性色鉛筆 36〜48色 | 塗り重ねの基本は十分できる |
| 〜8,000円 | 色鉛筆 72色+ブレンダー | グラデーションの仕上げまで |
| 10,000円〜 | プロ仕様のソフト芯 | 油絵のような深い発色 |
いきなり最上位を買っても、塗り方が追いつかないと差が分かりません。まずは真ん中の帯から始めて、物足りなくなったら上げるのが結局いちばん安く済みます。
まずは無料の図案で試す
新しい画材を買ったら、いきなり本番の塗り絵本に使わず、無料の図案で試してみてください。紙との相性や、重ねられる層の数が分かります。
- 模様・マークのぬりえ|細かい面が多く、塗り重ねの練習になる
- 花のぬりえ|グラデーションを試すなら
- 難易度別のぬりえ一覧|「むずかしい」から選ぶ
色数は、多いほどいいのか
大人向けのセットは、36色から150色まで幅があります。多いほど良い、とは限りません。
色数が多いことの利点は、近い色が並んでいることです。緑が10種類あれば、重ねずに濃淡を作れます。作業は速くなります。
一方で欠点もあります。探す時間が増えます。150色から1本を選ぶのは、思っている以上に手間です。そして、色を作る力がつきません。36色で「この緑は青を重ねて作る」とやってきた人のほうが、結果として色の扱いはうまくなります。
目安としてはこうなります。
- 36色|十分に足ります。ここから始めて困ることはありません
- 72色|風景や植物を描くなら効きます。緑と茶の種類が増えます
- 100色以上|必要になってからで構いません
足りないと感じたときに、単品で買い足せるのがプロ仕様の製品の利点です。最初から大きなセットを買う理由は、あまりありません。
油性と水性の使い分け
色鉛筆には油性と水性(水彩)があり、性格がかなり違います。
| 油性 | 水性(水彩) | |
|---|---|---|
| 重ね塗り | 得意。何層も乗ります | 層が少ないと色が濁りやすい |
| ぼかし | ブレンダーや溶剤で | 水だけでできます |
| 紙 | 普通の紙でも可 | 厚口の紙が要ります |
| 失敗の直しやすさ | 上から重ねて修正できる | 水を使うと戻せません |
大人の塗り絵で主流なのは油性です。理由は、重ねて色を作る作業に耐えるから。塗り絵は面を塗る作業が中心なので、層を重ねられることが直接効いてきます。
水彩を選ぶなら、紙をセットで考えてください。画材だけ良くしても、紙が薄いと結果が出ません。塗り絵の紙はどれがいい?もあわせてどうぞ。