「ティラノサウルスって、何色だったの?」——恐竜のぬりえを前にした子どもから、この質問が出たら大チャンスです。
答えは、「まだよく分かっていない」。恐竜の多くは化石でしか見つかっておらず、皮膚の色が残ることはめったにありません。つまり恐竜のぬりえには、正解がないのです。
これは塗り絵にとって、またとない条件です。この記事では「分からないからこそ自由に、でも説得力をもって塗る」ための考え方を紹介します。
なぜ図鑑の恐竜は茶色や緑が多いのか
図鑑の恐竜が地味な色で描かれがちなのは、現在の大型爬虫類や大型哺乳類を参考にしているからです。ワニ、ゾウ、サイ。大きな動物は、たいてい目立たない色をしています。
ただし近年は、羽毛の痕跡が見つかった恐竜も知られるようになり、鳥のように鮮やかだった可能性も語られます。どちらの想像も、頭ごなしに否定はできません。
そこで子どもに聞いてみてください。「この恐竜は、どこに住んでいたと思う?」森なら緑、砂漠なら茶色、水辺なら灰色。理由をつけて色を選ぶ練習になります。
説得力を出す3つの技
1. お腹側を明るくする
多くの動物は、背中が濃く、お腹が薄い色をしています。上から見ると地面にまぎれ、下から見ると空にまぎれる。生き延びるための配色です。
この法則を守るだけで、どんな色で塗っても「生き物らしく」見えます。ピンクの恐竜でも、お腹を薄いピンクにすれば違和感が減ります。
2. 模様を入れる
単色で塗ると、どうしてもおもちゃっぽくなります。しま模様、まだら模様、背中だけ濃い帯。模様が1種類入るだけで、生き物としての情報量が上がります。
模様は左右対称にしないのがコツです。自然の模様は、たいてい少しずれています。
3. 皮膚のシワを濃くする
ぬりえの線画には、皮膚のシワやウロコが描かれていることがあります。ここを塗りつぶさず、線のまわりだけ少し濃くすると、厚い皮膚の質感が出ます。
脚の付け根、首のしわ、口のまわり。この3か所を濃くするだけで立体感が変わります。考え方は影のつけ方とハイライトの入れ方と同じです。
恐竜別のヒント
| 恐竜 | 着目したい部分 | 塗り方のヒント |
|---|---|---|
| ティラノサウルス | 大きな頭と歯 | 口のまわりを濃くすると迫力が出る |
| トリケラトプス | 3本の角とえりかざり | えりかざりだけ別の色にすると映える |
| ステゴサウルス | 背中の板 | 板を体と違う色にする。血が通っていた説もある |
| スピノサウルス | 背中の帆 | 帆に模様を入れると個性が出る |
| ブラキオサウルス | 長い首 | 首の上下で濃淡をつけると太く見える |
えりかざりや背中の帆は、目立たせるための器官だったと考えられています。だとすれば、そこだけ鮮やかに塗るのは理屈に合っています。「なぜその色にしたのか」を説明できる塗り方です。
図鑑で「今の説」を確かめる
恐竜の姿は、研究が進むたびに描かれ方が変わってきました。同じ恐竜でも、古い図鑑と新しい図鑑で見た目が違うことがあります。
「昔はこう考えられていた」「今はこう」という違いそのものが、子どもには刺激的です。図鑑選びは塗り絵の参考になる恐竜の図鑑5選にまとめています。
塗ってみる
- ティラノサウルス|いちばん人気
- スピノサウルス|背中の帆で遊べる
- トリケラトプス|えりかざりを主役に
- 白亜紀の恐竜のぬりえ|全17種
- ジュラ紀の恐竜のぬりえ
色が「分かってきている」恐竜もいる
「誰も本当の色を知らない」と書きましたが、例外はあります。ここ10年ほどで、一部の恐竜については色の手がかりが見つかっています。
手がかりはメラノソームという、羽毛や皮膚の中にある色素の入れ物です。この形が化石に残っていることがあり、形によって色の種類が推定できると考えられています。細長ければ黒っぽい、丸ければ赤茶っぽい、といった具合です。
- アンキオルニス|黒と白の羽毛に、頭は赤茶色と推定されました
- シノサウロプテリクス|しっぽに赤茶と白のしま模様
- ボレアロペルタ|背中が濃く腹が明るい、いわゆるカウンターシェーディング
ただしこれは羽毛のある小型恐竜が中心で、ティラノサウルスやトリケラトプスの色は今も分かっていません。だから「自由に塗っていい」という話は変わりません。分かっている例があると知ったうえで自由に塗るのは、何も知らずに塗るのとは違います。
派手に塗ると失敗する、その理由
自由に塗っていいと言われて、蛍光ピンクの恐竜を作る子はよくいます。それ自体は歓迎すべきですが、「なんか変」と本人が言い出すことがあります。
原因は色そのものではなく、濃淡がないことです。1色でべた塗りすると、どんな色でも紙に貼ったシールのように見えます。逆に、蛍光ピンクでもお腹側を明るくして背中を濃くすれば、ちゃんと生き物に見えます。
つまり説得力を決めているのは色相ではなく明暗です。ここが分かると、色選びで悩まなくなります。「好きな色でいいよ、ただし背中は濃くね」——この一言だけ添えてください。