デイサービスや施設のレクリエーションで、塗り絵は定番の活動です。準備が少なく、個々のペースで取り組め、道具も場所も選ばない。進行役ひとりでも成立する数少ない活動でもあります。
一方で、「同じ塗り絵ばかりで飽きられる」「難しすぎて途中でやめてしまう」という声もよく聞きます。題材と難易度の選び方で、参加のしかたはかなり変わります。
この記事では、高齢者施設で塗り絵を使うときの選び方と進め方をまとめます。
題材選びの基本|「知っているもの」を選ぶ
いちばん大事な基準です。見たことのあるもの、暮らしのなかにあったものを選ぶと、手が動きやすくなります。
初めて見るキャラクターや、複雑な図案では「何を塗っているか分からない」状態になり、途中で止まってしまいます。
- 春の花・夏の花・秋の花・冬の花|四季で50種以上。定番中の定番
- 野菜・果物|身近で、色がはっきりしている
- 冬の行事など季節の行事|正月・節分・七夕。会話が生まれやすい
- 模様・マーク|和柄。手を動かすことに集中できる
特に花と季節の行事は反応がよい題材です。「これは庭に植えていた」「昔はこうしていた」と、塗りながら話が始まります。
難易度の合わせ方
| 状態 | 選ぶ図案 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 手の動きに不安がある | 塗る面が3〜5か所。輪郭が太い | 10〜15分 |
| 集中が続きにくい | 面が少なく、1枚で完結する | 10分程度 |
| 細かい作業ができる | 細部のある図案、和柄 | 30分以上 |
| じっくり取り組みたい | 模様や風景。何日かに分けても | 数日 |
難易度は2〜3種類用意するのが実務上のコツです。全員に同じ図案を配ると、早く終わる方と手が止まる方の差が出ます。テーブルに数種類並べて選んでもらう形にすると、この問題がほぼ解消します。
難易度別のぬりえ一覧から、かんたん・ふつう・むずかしいで選べます。
印刷でひと工夫
- 拡大して印刷する|A4をA3に拡大すると、線が太くなり塗りやすくなります
- 厚めの紙に|紙がずれにくく、消しゴムにも耐えます
- 白黒・原寸で|「用紙に合わせる」だと少し縮小されます
- 予備を多めに|「もう1枚」に応えられるように
1番目が効きます。線が太いほど、はみ出しが目立ちません。「うまく塗れない」という気持ちを減らせます。
施設にプリンターがない、枚数が多いという場合はコンビニでの印刷方法も使えます。紙の選び方は塗り絵の紙はどれがいい?にまとめました。
画材は「持ちやすさ」で選ぶ
握力が弱くなっている方には、細い色鉛筆はつらいことがあります。太軸のものや、力を入れなくても色がつくやわらかい芯を選んでください。
クーピーのように全体が芯でできている画材は、折れにくく、消しゴムで消せるので、失敗を気にせず進められます。
画材の違いはクレヨン・クレパス・クーピー・色鉛筆はどう違う?にまとめています。
進め方で気をつけたいこと
- 完成を目標にしない|途中でやめてよいことを最初に伝える
- 色を指定しない|「本当は赤ですよ」と言わない。自由に塗ってよい
- 比べない・並べない|掲示するなら全員分を同じ扱いで
- 手を出しすぎない|代わりに塗るより、待つ
- 会話を目的にする|作品より、その時間のやりとりが本題
最後の項目が本質だと思います。塗り絵は手段で、目的は時間の質です。きれいに仕上がらなくても、その30分に会話があれば成功です。
季節を先取りする
行事の少し前に、その行事の塗り絵を配る。塗ったものを壁面に飾ると、施設全体の季節感につながります。
正月飾り、節分の鬼、ひな祭り、七夕。飾るところまでを活動に入れると、参加した実感が残ります。
塗った作品を飾る方法は節分の鬼のお面やひな祭りのおひなさまでも紹介しています。
効果について
塗り絵と脳のはたらきの関係については、塗り絵で脳を活性化と塗り絵は認知症予防に効果あり?で扱っています。
ただ、現場で大事なのは効果を狙うことより、その方が楽しめているかだと思います。楽しめていれば続き、続けばそれ自体が意味を持ちます。
使いやすいぬりえ
- 難易度別のぬりえ一覧|利用者に合わせて選ぶ
- 花のぬりえ|四季で50種以上
- 模様・マークのぬりえ|和柄
- 人気の塗り絵ランキング
施設でのご利用については塗り絵の著作権と利用範囲にまとめました。正式な条文は利用規約をご確認ください。ご不明な点はお問い合わせからご連絡いただければ回答します。
手が動きにくい方への具体策
デイサービスの現場でいちばん問題になるのは、握力と細かい動作です。ここを道具で解決できると、参加できる方が増えます。
- 太い三角軸の色鉛筆|転がらず、握りやすい。子ども向けのものがそのまま使えます
- 鉛筆用のグリップ|100円ショップのもので十分。指の負担がかなり減ります
- 紙を固定する|マスキングテープで机に留める。押さえる手が要らなくなります
- 滑り止めシート|紙の下に敷く。テープを嫌がる方に
紙が動くことが、思っている以上に大きな障害になります。片手で押さえながら塗るのは、力の弱い方にはかなりの負担です。固定するだけで「今日はよく塗れた」となることがあります。
マーカーは、力が入らなくても色がつくという利点があります。ただし裏写りするので、下に新聞紙を敷いてください。
昔の記憶とつながる題材
題材選びで「知っているもの」を勧めましたが、もう一歩進めると、昔の暮らしにつながる題材が会話を生みます。
- 季節の花|「庭にあった」「実家の裏に咲いていた」という話が出ます
- 野菜・果物|作っていた方が多い。育て方の話になることも
- 行事もの|正月、七夕、お盆。地域による違いの話が出ます
- 昔の乗り物|蒸気機関車、路面電車。男性の参加率が上がります
ここで大事なのは、塗ることが目的ではなくなってよいという点です。手が止まって話し込んでしまっても構いません。むしろ、そちらのほうが価値のある時間になっていることがあります。
男性の参加が少ないという声はよく聞きます。花や動物では動かない方も、乗り物や道具の絵柄だと手を出すことがあります。題材を1〜2種類足すだけで変わるので、試してみてください。