塗り絵の歴史をたどると、その起源はなんと、私たち人類が誕生したばかりの古代にまでさかのぼります。
色を塗るという行為は、子どもたちの遊びや大人の趣味としてだけでなく、古代の人々にとって、もっと深い意味を持つ大切な行為でした。
この記事では、古代人がなぜ塗り絵をしたのか、その理由を洞窟壁画や古代の遺跡から読み解いていきます。
塗り絵が単なる遊びではなく、彼らの生活や信仰に深く根ざした行為だったことを、一緒に考えてみましょう。
目次
洞窟壁画に込められた古代人の思い
フランスのラスコー洞窟や、スペインのアルタミラ洞窟に残された壁画は、古代の塗り絵の最も古い例と言えるでしょう。これらの壁画は、今から数万年前、旧石器時代の人々によって描かれました。
なぜ、彼らは暗い洞窟の奥深くで、動物たちの絵を描いたのでしょうか?
1. 狩りの成功を願う「呪術」のため
古代の人々にとって、狩りは命がけの行為でした。食料を得るために、彼らは獲物となる動物たちを壁に描き、そこに色を塗ることで、狩りの成功を願う呪術的な儀式を行ったと考えられています。
「絵に描くことで、その動物の魂を支配できる」という、原始的な信仰があったのかもしれません。
2. 子どもたちへの「教育」のため
また、洞窟壁画は、親から子どもへと、狩りの方法や動物の特徴を教えるための教科書としての役割も果たしていたと考えられます。
「この動物はこうやって狩るんだよ」「この部分は特に気をつけなきゃいけない」
壁画に色を塗りながら、実際の狩りの様子を説明することで、言葉だけでは伝えきれない大切な知識を、次世代へと伝えていたのかもしれません。
古代エジプトの壁画と塗り絵
紀元前3000年頃に栄えた古代エジプト文明でも、塗り絵の原型を見つけることができます。
エジプトの壁画は、死者の魂が安らかに旅立てるよう、墓の内部に鮮やかな色で描かれました。
これらの絵画は、まず職人が輪郭線を描き、その中に別の職人が色を塗っていくという、まるで分業制の塗り絵のような手法で制作されていたことがわかっています。
1. 永遠の命を願う「宗教的儀式」のため
エジプトの人々は、死後の世界での永遠の命を信じていました。壁画に描かれた絵は、その魂が無事に旅を続けられるように、現実世界の出来事を記録し、来世での生活を豊かにするための祈りの道具でした。
鮮やかな色を塗る行為は、彼らの信仰と深く結びついていたのです。
2. 情報を記録する「歴史書」のため
また、エジプトの壁画は、その時の出来事や生活の様子を記録する、文字を持たない歴史書の役割も果たしていました。
農作業や宴会の様子、王の功績などが絵とヒエログリフで描かれており、塗り絵のように色を塗ることで、後世に情報を正確に伝えるという目的もあったと考えられます。
まとめ:古代人にとっての塗り絵は「生きるための営み」
古代人にとっての塗り絵は、単なる暇つぶしや娯楽ではありませんでした。
- 狩りの成功を願う呪術
- 次世代への教育
- 永遠の命を願う宗教的儀式
- 歴史を後世に伝える記録
これらの行為はすべて、彼らが「生きる」ために、そして「生き続ける」ために必要な、真剣な営みでした。
色を塗り、絵を描くという行為は、私たちが思う以上に、人類の生活と深く結びついていたのです。
「ぬりえ図鑑」では、古代の壁画をモチーフにした塗り絵も提供しています。
次に塗り絵をする時は、そんな古代のロマンに思いを馳せながら、色を塗ってみてはいかがでしょうか? きっと、いつもの塗り絵が、もっと奥深い時間になるはずです。