カブトムシを塗ろうとして、黒い色鉛筆を1本だけ手に取る。塗り終えると、なんだかのっぺりした影のような虫ができあがる——。よくある話です。
ところが図鑑の写真を見ると、カブトムシは黒くありません。赤みがかった茶色、深い焦げ茶、光の当たり方によっては金色にすら見える。クワガタも同じで、種類によって色がまるで違います。
この記事では、手持ちの色鉛筆でカブトムシ・クワガタらしい「硬い殻のツヤ」を出す方法を紹介します。使うのは黒だけではありません。
黒は「最後に少しだけ」使う
いちばん大事な原則です。黒から塗り始めると、それ以上どうにもなりません。黒は他の色を覆い隠してしまうからです。
順番を逆にします。
- 赤茶色を全体に薄く塗る(これが下地になる)
- こげ茶を上から重ねる。ここで一気に深みが出る
- 黒を、いちばん暗い部分にだけ足す

この3層でできる黒は、黒一色で塗った黒とはまったく違います。下に色があるかどうかで、深さが変わるのです。
ツヤは「塗り残し」でつくる
カブトムシの背中(前ばね)は、硬くてなめらかです。だから光が当たると、白く光る帯ができます。
この光は、塗らないことでしか表現できません。白い色鉛筆で後から描いても、下の色は消えません。最初から残しておく必要があります。
- 背中の中央|縦に細長く残す
- 角の上側|線にそって細く残す
- 頭の丸み|頂点に小さく残す
残す幅は思い切って細くしてかまいません。細いほど、硬くてツルツルした質感に見えます。考え方は光沢の塗り方と同じです。
クワガタは「大アゴ」が主役
クワガタを塗るときは、大アゴに手間をかけてください。ここがその種の顔です。
大アゴは内側が暗く、外側が明るいのが基本です。付け根をいちばん濃くし、先端に向かって少しずつ薄くしていくと、太さと立体感が出ます。
ノコギリクワガタは大アゴが大きく曲がり、ミヤマクワガタは頭に張り出しがあります。並べて塗ると違いがはっきりします。
種類別の色メモ
| 種類 | 下地 | ポイント |
|---|---|---|
| カブトムシ | 赤茶+こげ茶 | 個体差が大きい。赤っぽい個体もいる |
| ノコギリクワガタ | 赤茶 | 全体に赤みが強い。黒を入れすぎない |
| ミヤマクワガタ | こげ茶+黄土色 | 体の表面に細かい毛がある。少しくすませる |
| オオクワガタ | こげ茶+黒 | 黒っぽいが、光沢が強い。塗り残しを多めに |
| ヘラクレスオオカブト | 黄土色 | 前ばねは黄色っぽい。黒く塗らない |
ヘラクレスオオカブトは特に注意が必要です。角は黒いのに、前ばねは黄土色や黄緑がかった色をしています。全身を黒く塗ってしまうと別の虫になります。
本物の色を確かめる
種類ごとの色は、図鑑で確認するのがいちばん確実です。標本写真は背面だけでなく側面が載っているものを選ぶと、ぬりえの角度に対応しやすくなります。
図鑑選びは塗り絵の参考になるカブトムシ・クワガタの図鑑5選にまとめました。
塗ってみる
- カブトムシ|まずはこの1枚
- ヘラクレスオオカブト|黄土色に挑戦
- ノコギリクワガタ|大アゴの練習に
- カブトムシ・クワガタのぬりえ一覧|全21種
なぜ黒く塗ると失敗するのか
「黒は最後に少しだけ」と書きましたが、理由を知っておくと納得できます。
紙の上でいちばん暗く出せるのは黒鉛筆です。最初に黒を置くと、そこが画面の最暗部として固定されます。すると、あとから塗る茶色や赤茶がすべて「明るい色」になってしまい、立体感を作る余地がなくなります。
もうひとつ、黒の上には何も乗りません。色鉛筆の芯は完全な不透明ではないので、薄い色の上には重ねられますが、濃い黒の上に茶色を重ねてもほとんど変化しません。順番を戻せないのです。
実際のカブトムシも、光の下では赤茶色に見える個体が多い。真っ黒に見えるのは日陰にいるときです。黒を最後に回すのは、見た目の再現としても正しい順番になっています。
飼っている子は、見ながら塗れる
夏に飼育しているなら、ケースの横に紙を置いて塗るのがいちばんです。写真や図鑑より情報量が多い。
見てほしいのは3か所です。
- 前ばねの継ぎ目|背中の中央に1本線が入っています。ここは必ず暗い
- 脚の色|体より濃い個体がほとんどです。同じ茶色で塗ると平坦になります
- 体の下側|こまかい毛が生えていて、色が違って見えます
羽化したての個体はまだ白っぽく、数日かけて色が濃くなります。この時期に飼っていれば、日ごとに色が変わっていくのを見られます。同じ絵柄を数日おきに塗って並べると、記録としても残ります。
飼っていない場合は、夜のコンビニや自販機の明かりの下で見つかることがあります。7月から8月がねらい目です。