カマキリのぬりえを渡すと、決まってこう聞かれます。「緑? 茶色?」
答えは「どちらも正解」です。オオカマキリには緑色をした個体と、褐色(茶色)をした個体がいます。どちらも同じ種類で、どちらも本物です。
おもしろいのは、なぜ2種類の色がいるのかが、はっきりとは分かっていないことです。塗り絵にとって、これほど自由な題材はそうありません。
同じ種類なのに色が違う
公園や草むらでカマキリを探すと、緑色の個体と茶色の個体の両方に出会います。並べて見ると別の虫のようですが、同じオオカマキリです。
色の違いが生まれる理由については、育った環境が関係しているという見方や、生まれつき決まっているという見方があり、研究者のあいだでも議論があります。「草が茶色くなる秋に茶色い個体が増えるのでは」といった説明もよく聞きますが、これも確定した答えではありません。
つまり、大人にも分からないことがあるわけです。子どもに「どっちだと思う?」と聞いてみてください。理由を考えて色を決める、いい練習になります。
カマキリの色を塗り分ける
緑色型
緑1色で塗ると、造花のように見えてしまいます。みどりに黄色を少し重ねると、草に近い自然な緑になります。
背中側は濃く、お腹側は薄く。この差をつけるだけで、平たい紙から立体が浮かびます。
褐色型
茶色も1色では足りません。黄土色を下地にして、こげ茶を重ねると、枯れ草にまぎれる色になります。
脚の関節や、体の節の境目だけを濃くすると、硬い体らしくなります。
共通のポイント
- 目|黒く塗りつぶさず、白い点を1つ残すと生きているように見える
- 前あし(鎌)|内側にトゲがある。ここを濃くすると鋭さが出る
- 羽|半透明。塗りすぎず、うっすら色を置く程度に
- お腹|背中より明るく。生き物らしさの決め手
4番目の「お腹を明るく」は、カマキリにかぎらず多くの生き物に共通する法則です。詳しくは恐竜の塗り方でも触れています。
カマキリの仲間もいろいろ
ぬりえ図鑑には4種類のカマキリがあります。それぞれ体つきが違うので、並べて塗ると違いが見えてきます。
| 種類 | 特徴 | 塗るときのヒント |
|---|---|---|
| オオカマキリ | いちばん大きく、よく見かける | 緑・茶どちらでもよい |
| ハラビロカマキリ | お腹が幅広い | 体の太さを濃淡で表す |
| ハナカマキリ | 花に似た姿 | 白・ピンクで華やかに |
| コカマキリ | 小さめ。褐色の個体が多い | 黄土色+こげ茶で |
ハナカマキリは、花に似た姿をした東南アジアなどにすむカマキリです。日本のカマキリとまったく違う見た目なので、塗ると印象が変わります。緑や茶色ではなく、白やピンクで塗れる珍しい虫です。
意外と人気があります
ぬりえ図鑑のデータを見ると、カマキリは1種類あたりのダウンロード数がサイト全体で4番目に多いカテゴリーです。種類はたった4つしかないのに、これだけ選ばれています。
カブトムシやクワガタほど目立ちませんが、捕まえやすく、飼いやすく、動きが面白い。子どもにとって身近な虫のひとつなのだと思います。
捕まえてきたら、横に置いて塗る
カマキリは捕まえやすい虫です。虫かごに入れて机に置き、見ながら塗るとまったく違う時間になります。
実物を見ると、写真では気づかない発見があります。目に黒い点があること、羽が体より長いこと、鎌の内側にトゲが並んでいること。その日に気づいたことを塗り足すと、記録としても残ります。
塗ってみる
色は何で決まるのか
緑と褐色がいるのは分かった。では何がその色を決めているのか。ここが子どもにいちばん聞かれるところです。
正直に言うと、完全には分かっていません。ただ、これまでの研究で分かっていることがいくつかあります。
- 脱皮のときに変わる|色は成長の途中で切り替わります。生まれたときに決まっているわけではありません
- 周りの環境が影響する|湿度や、育った場所の明るさが関わるという報告があります
- 背景に合わせて変わるわけではない|カメレオンのように、その場で色を変えることはできません
3つめが大事です。カマキリは、いま自分がいる場所に合わせて色を変えられません。だから、緑の草むらに褐色のカマキリがいることもあります。塗り絵で「草の上にいるのに茶色い」としても、間違いではないのです。
「分かっていない」と正直に伝えるのは、悪いことではありません。まだ分かっていないことがあると知るのは、生き物に興味を持つきっかけになります。
緑を1本で塗ると失敗する
緑色型を塗るとき、緑の色鉛筆1本で塗ると、プラスチックのおもちゃのように見えます。
本物のカマキリの緑は、黄色に近い緑です。そして体の場所によって色が違います。
- 前ばね|いちばん明るい黄緑。ここが体の中で最も薄い
- 胸(前脚の付け根から後ろ)|やや濃い緑
- 脚|黄色みが強く、関節だけ濃い
- 前脚の内側|黒や紫の斑紋があります。ここは緑ではありません
手順としては、まず全体に黄色を薄く敷いてから、緑を重ねる。これだけで、1本で塗ったときとまったく違う色になります。緑の上に黄色を重ねても同じにはなりません。順番が結果を決めます。