サメのぬりえを渡すと、たいてい全身を同じ灰色で塗ります。でも図鑑や水族館の写真を見ると、背中は濃く、お腹は真っ白。はっきり2色に分かれています。
これには理由があります。しかも、サメだけの話ではありません。マグロも、イルカも、ペンギンも、同じ塗り分けをしています。
理由を知ると、塗るときに迷わなくなります。この記事では「なぜ上下で色が違うのか」と、それを塗り絵にどう活かすかを紹介します。
上から見ても下から見ても、見つかりにくい
海の中を想像してみてください。上には明るい水面、下には暗い深い海があります。
- 上から見下ろすと|背景は暗い海。だから背中が濃いと紛れる
- 下から見上げると|背景は明るい水面。だからお腹が白いと紛れる
どちらの方向から見ても見つかりにくい。この塗り分けは、身を隠すための仕組みなのです。カウンターシェーディング(対向陰影)と呼ばれています。
獲物に気づかれずに近づくためでもあり、大きな魚に狙われないためでもあります。追う側も追われる側も、同じ答えにたどり着いたわけです。
もうひとつの効果
光は上から当たります。ふつうの物体は、上が明るく下が暗くなり、立体的に見えます。
ところが背中が濃くお腹が白いと、この明暗が打ち消されます。上から当たる光で背中が明るくなっても、もともと濃いので中間に落ち着く。結果として、平べったく、輪郭がぼやけて見えます。
つまりこの配色は、隠れることと、立体感を消すことを同時にやっています。塗り絵で「立体感を出すには上を明るく」と教わるのと、ちょうど逆のことが起きています。
サメを塗るときの手順
- 背中側を濃いグレーか濃紺で塗る(体の上から半分ほど)
- 境目は線で区切らず、少しぼかす
- お腹側は塗らない。紙の白を残す
- お腹の影になる部分にだけ、ごく薄い水色を入れる
2番目がいちばん差が出ます。実物の境目はぼんやりしています。きっちり線で分けると、色を塗り分けた模様に見えてしまいます。両方の色を少しずつ重ねて、なじませてください。
種類別のヒント
| ぬりえ | 背中側 | ポイント |
|---|---|---|
| ジンベエザメ | 濃い青灰色 | 白い斑点は塗り残す。水中生物で最も人気 |
| ホホジロザメ | 濃いグレー | 境目がはっきりめ。名前のとおり腹が白い |
| エビスザメ | 茶色がかったグレー | 海底近くにすむ。やや地味な色 |
ジンベエザメの白い斑点は、塗らずに残すのがコツです。白い色鉛筆で描いても、下の色は消えません。塗る前に位置を確かめてください。
同じ塗り方ができる生きもの
この配色はサメの専売特許ではありません。海で暮らす動物の多くが同じ仕組みを持っています。
海の生きものを塗るときは、まず上下で濃さを変える。これを覚えておくと、初めて塗る魚でも迷いません。
陸の動物にも同じ傾向があります。恐竜のぬりえでお腹を明るくすると生き物らしく見えるのも、同じ理屈です。詳しくは恐竜の塗り方で触れています。
塗ってみる
- サメのぬりえ一覧|上下の塗り分けが分かりやすい
- 海の生き物のぬりえ一覧|カテゴリーをまたいで41種
- 魚のうろこの塗り方|光の帯の作り方
- 海の生き物の図鑑5選
サメの肌は、うろこではない
魚を塗るときはうろこを意識しますが、サメにうろこはありません。
サメの体をおおっているのは楯鱗(じゅんりん)と呼ばれるもので、構造としては歯に近い。表面がざらざらしていて、頭から尾へ向かってなでるとなめらか、逆になでるとやすりのようにひっかかります。かつては本当にやすりとして使われていました。
塗り絵に効くのはここです。サメの体には、うろこの線を描いてはいけません。魚のように1枚ずつ塗り分けると、サメに見えなくなります。
代わりにやるのは、面をなめらかに塗ること。そして体の側面に、頭から尾へ向かう長い光の帯を1本通す。線ではなく面で見せるのがサメです。
「こわい魚」ではない、という話
サメを塗っていると、たいてい「人を食べるの?」と聞かれます。せっかくなので、そこも話のたねにしてください。
サメは世界に500種以上いますが、人を襲うことがあるのはごく一部です。そして、いちばん大きなサメであるジンベエザメは、プランクトンを食べています。体長は10メートルを超えるのに、口の中に大きな歯はありません。
ウバザメも同じくプランクトン食。大きいことと、こわいことは関係がないという分かりやすい例です。
ジンベエザメを塗るときは、背中の白い斑点が主役です。青みがかった灰色で背中を塗ってから、白い点を残す——のではなく、先に点の位置を決めて、そこを避けて塗るのが確実です。あとから白を抜こうとすると、たいていうまくいきません。